コロナ禍における在宅勤務の増加により、「オンライン映え」といった新たな言葉も誕生したように、オンライン会議で画面に映った自分の顔と向き合う機会が増えました。その影響で「老け顔」「疲れ顔」が気になると感じる男性も増加傾向があります。

一方で、20代30代の男性の中には、基礎化粧品で肌の手入れやメイクをする「美容男子」が増えています。このように、コロナ禍をきっかけに男性の美意識は変化しています。

今回は、⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古山 登隆 先⽣に、男性の美容に対する意識の変化と男性にもおすすめの美容医療について話を伺いました。

男性の美容に対する意識の変化

―先生のクリニックには男性の患者さんは増えていますか?

ここ数年で、かなり増えたと実感しています。

―増加した理由にどんな事が考えられますか?

30年ほど前に美容医療治療を受ける感度の高い女性が増えたように、今、同じ流れが男性のエグゼクティブ層でみられるようになってきました。マスク生活が長引く中で、 自ずと視線が集まる“ゴーグルゾーン”※1に見えるクマやシミ、しわ、たるみを気にする男性が増えています。例えば、女性と違い目尻のしわよりも眉間のしわが気になるという男性が多く、目の下のゴルゴライン※2のたるみにより顔が疲れた印象に見られるなど、相談にいらっしゃる男性も増えています。

また、コロナ禍による影響はマスクだけでなく在宅勤務に伴い増加したオンライン会議によって、自分の顔を見る機会が多くなったこともあります。一般的に男性は女性に比べ、これまでは自分の顔に向き合う機会が少なかったと思いますが、コロナ禍を経て自分の顔を客観的に見る回数が圧倒的に増えたのではないでしょうか。会議での同僚からの視線も気になる中で少しでも見栄えをよくしたい、印象を良くしたいという「オンライン映え」を意識したビジネスマンが増えているということがあります。

※1こめかみから目元にかけてのゾーン
※2目の下から頬に入る痩せた溝のライン
※3口角の両脇から下に伸びる溝のライン

―コロナ禍を経て需要が増えたという理由以外に、他に何か考えられることはありますか?

グローバル化が進み、多様な価値観が生まれたことが、必然的に自分を他人にどう見せるかを意識することを加速させました。例えば、ひと昔前はハリウッドスターの影響もあり、眉間にしわを寄せる男性を「渋い」とする風潮もありましたが、現在では「神経質な人」と見られてしまう、等価値観は時代により変化します。

また、「人生100年時代」と言われるようになり、社会のニーズは生涯現役に変化し、「より自分を若く見せたい」「やる気がみなぎっているように見せたい」「多くの人に好感を持ってもらいたい」というニーズが増えています。

したがって「男は中身で勝負」ではなく、「男は中身も外見も勝負」の時代を迎えている事が考えられます。

世代別の美容への取り組み

メイクもファッションの一部と考える若者たち

若年世代男性は美容に対してどのような意識を持っていると思いますか?

K-POPアイドルや韓国ドラマが若い世代の流行の火付け役になっている近年は、ファッションだけでなく、彼らが提案するメイクやスキンケア(化粧水や乳液といった基礎化粧品)をする事に抵抗がありません。さらに、近年の「ジェンダーレスコスメ」の登場もあり、肌荒れを隠して元気よく見えるように、清潔感や好感を持たれるようにと、メイクアップをする若年世代の男性も増えています。

日焼けによるダメージの蓄積が肌悩みとなっているミドル世代

―ミドル世代の男性はいかがでしょうか?

日々のスキンケアも若年世代に比べ、これまでほとんどしてこなかった人が多く、蓄積されたダメージが表面化し始めますが、かといってメイクアップにも抵抗を感じてしまうのがミドル世代です。例えば、UVケアも不十分なままゴルフ場で散々日焼けをするなど、長年直射日光や乾燥にさらされた結果、この年代になって女性同様にシミ、しわ、たるみのアンチエイジングにまつわる悩みが男性にも増えるのです。

ミドル世代、男の美容医療

気になる「シミ・しわ・たるみ」には

スキンケアや日焼け止めで「シミ・しわ・たるみ」は予防や改善ができますか?

「シミ・しわ・たるみ」は予防をしていても防ぎきれない事もあり、また男性は蓄積してきたダメージが女性よりも多い方が多く、スキンケアだけでの改善は難しい事があります。その場合は美容医療に頼るのも一つの方法です、近年は老化のメカニズムの研究が進んだことで、かなり的確に治療が行えるようになってきています。

シミには肌のターンオーバーを促進する働きを持っているトレチノインや高い美白作用のある、トレチノイン・ハイドロキノン療法の外用治療などがあります。その他、シミや色ムラなど肌のアンバランスは、レーザー治療で整えることができます。

また、しわは種類によって対策は異なります。表情のクセによりできた表情じわは、化粧品では改善することが難しいしわです。美容医療の治療では、ボツリヌス注射 による治療が一般的です。ただし、深く刻みこまれたしわには、ボツリヌス注射のみでの改善が難しい場合もあり、ヒアルロン酸注入など他の治療との併用が必要になることがあります。

ほうれい線やマリオネットライン※3は、しわの一種ではありますが、本来の原因はたるみです。対策を考える際には、たるみの改善を意識することが重要となります。たるみじわの改善には、ヒアルロン酸注入などの美容医療の治療が有効です。その他には、糸リフト(溶ける糸を用いたリフトアップ治療)、機器を用いた高密度焦点式超音波(HIFU)や、ラジオ波を用いた治療、手術によるフェイスリフトなどの治療オプションが検討できるでしょう。

骨格から考える「フェイシャルプランニング」

日本人をはじめモンゴロイド系の骨格は、頬骨がでていて、顎が小さいという特徴があります。こういった骨格は首のたるみが強く出やすく、また一度たるみが出てしまうと首は一番直しづらいのです。

ゴーグルゾーンのエイジング変化は目元から下の部分に影響を与え、最終的に首に影響を与えるため、軽いうちに顔の上の方から治療していくことが大切です。ゴールを決めて、「フェイシャルプランニング」することで、よりナチュラルな仕上がりになります。

これからも男性美容、男性美容医療のニーズは増えていきますか?

最近は、男性専用の美容クリニックも登場してきており、男性が美容、美容医療が受けやすい環境になってきていると思います。男性に美容意識が高まることで、女性の気持ちを理解し、寄り添えるようになるはずです。ジェンダーフリーの時代を迎え、「男は」「女は」ではなく、ダイバーシティ的な感覚を持つべきだと思います。

今後は、エチケットの一つとして、男性も美容医療を必要とする時代がくるのではないでしょうか。

監修・取材協力

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古⼭ 登隆 先⽣

医療法⼈社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995 年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック

住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

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