見た目年齢を引き上げてしまう「ほうれい線」は一刻も早く改善したい肌悩みの一つです。ここでは、美容皮膚科医の監修の元、ほうれい線の原因、セルフケアなどの対策について詳しく解説します。

監修:高須英津子先生(銀座高須クリニック院長)

ほうれい線とは?

ほうれい線は、鼻の横から上唇に「ハ」の字に現れるラインで、たるみじわの一つです。医学用語では鼻唇溝(びしんこう)と呼ばれます。

年齢を感じさせる肌悩みの一つで、20~40代の女性にアンケート調査※をしたところ約3人に1人が悩んでいることがわかります。年代別に見ると、やはり年齢を重ねるにつれて悩んでいる人の割合が増加しています。

※図)現在気になる肌の悩みは?

「ほうれい線」と「しわ」の違い

先ほどほうれい線は「たるみじわ」の一つと説明しました。実はしわと言ってもさまざまな種類があり、特徴や原因、対策が異なります。

しわの種類

  • 小じわ(ちりめんじわ)
  • 大じわ(構造じわ)
  • 表情じわ
  • たるみじわ

たるみじわは文字通り、肌のたるみ(下垂)によって生じますが、皮膚に刻み込まれる一般的な「しわ」とは異なります。肌内部の形状が崩れた結果、影ができ、しわのように見える境界線・溝なのです。

さまざまな影響によって現れる、ほうれい線の改善は容易ではありません。

ほうれい線が目立つ原因

肌のたるみ・ハリ不足

ほうれい線が生じる根本的な原因は肌のたるみです。私たちの顔は骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層から成り立っており、たるみは主に加齢による変化で起こります。特に大きく影響を及ぼすのは以下の層です。詳しく説明しましょう。

1. 骨

顔の骨は「顔の土台」として筋肉・皮下脂肪・真皮・表皮を支えていますが、加齢によって骨は骨密度が減少し、小さくなります。この変化によって各層を十分に支えられず、重力によって垂れ下がり、たるみを引き起こすのです。

2. 皮下脂肪

加齢や急激な体重の増減による皮下脂肪の量の減少や移動でもたるみは生じます。頬の皮下脂肪も元々あった場所から下に移動(下垂)し、口まわりの皮下脂肪の量が減ることにより、溝が深くなってしまうのです。

3. 真皮(皮膚)

加齢や紫外線を長年浴び続けると、肌のハリ・弾力性を持たせているコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸は失われ、これらを産生する線維芽細胞も機能低下や損傷し、肌の弾力がなくなります。

頬・口元の筋肉(表情筋)の減少・衰え

頬・口元の筋肉(表情筋)の減少や衰えでもほうれい線を目立たせます。皮下脂肪や皮膚を支えられず、たるみに繋がったり、上下にひっぱる筋肉のバランスが崩れてしまうと、肌が下垂したように見え、ほうれい線を目立たせてしまうのです。加齢はもちろん、マスク生活で口角を使う・意識することが減ると筋肉が衰えてしまうので注意しましょう。

顔立ち(骨格・筋肉・歯並び)

頬骨の高さ、筋肉のつき方や量、頬の脂肪の程度、などの影響を受けます。

頬骨の位置が高いまたは張っていない、口元が突出しているなど、骨格によってほうれい線が目立ちやすいタイプがあります。

肌の乾燥

乾燥はほうれい線はもちろん、しわや溝を目立たせる原因です。ドライフルーツを例に挙げると、イメージしやすいかもしれません。みずみずしさ(うるおい)を失うと、乾燥によるしわができることはもちろん、影が目立つようになってしまうのです。

加齢にともなって、30~40代頃から皮脂の分泌量は減少するので、肌は乾きやすくなります。また気候やエアコンはもちろん、紫外線も間接的に肌の乾燥を招くので、注意しましょう。

むくみ

むくみだけでほうれい線が生じるわけではなく、肌のたるみと合わさって、ほうれい線を目立たせてしまう原因になります。肌内部に余分な水分が溜まってしまうと、その重さで肌は垂れ下がってしまうのです。

骨格の歪み(姿勢・表情・咀嚼などのクセ)

猫背などで姿勢が悪い、片側だけで咀嚼する、寝る時に左右のどちらか決まった方を向いて横になる──などの日常生活のクセがほうれい線を目立つ原因になります。重力の影響でより肌が下垂しやすかったり、片側ばかりの表情筋ばかり動かしたりするためです。

一時期なクセで起こるものではなく、長年続けてしまった影響、経時的変化で起こります。

アンケート調査ではほうれい線を気にしている人の半数以上が、ほうれい線に悪影響を及ぼすクセを持っていました。

20代でほうれい線が目立ってしまうのはなぜ?

根本的な原因は加齢の影響によって起こる肌のたるみですが、たるみが起こりにくい20代でもほうれい線が気になる方は少なからずいると思います。アンケート調査でも約5人に1人がほうれい線で悩んでいました。

20代でほうれい線が目立ってしまうのは、前に説明した顔立ちや骨格のゆがみ、そして肌の乾燥、むくみが影響を及ぼしているといえるでしょう。加えて注意すべきは無理なダイエット。栄養不足によって表情筋の筋肉が減少し、肌の老化を招いてしまいます。

普段のほうれい線対策。医師が教えるウソ・ホント

インターネット上でさまざまなほうれい線対策が取り上げられていますが、どれも有効なのでしょうか。高須先生に伺ってみました。

スキンケア

アンケート調査でも最も多くの人が行っているほうれい線対策です。

対策としては【有効】で、ほうれい線をはじめさまざまな肌悩みの原因となる肌の乾燥を防ぐためにスキンケアは欠かせません。化粧水や乳液などの基礎化粧品でのていねいな保湿はもちろん、肌の乾燥やダメージを与える紫外線対策も心がけましょう。

表情筋のストレッチ・マッサージ

ほうれい線を消す・解消すると謳うストレッチやマッサージ、顔ヨガ、体操などが紹介されています。アンケート調査でもスキンケアに次いで行われている対策でした。

対策としては【やや有効】で、適切な方法で継続的に行えば、一定の効果は期待できます。顔のむくみを取り除く、リンパの流れを良くするためのマッサージを行う際はやりすぎないよう注意してください。筋肉を傷つけてしまったり、擦りすぎは肝斑を起こしてしまう危険性があります。あくまでもほぐす程度です。また筋肉を下から上に、顔の中心から外になど引き上げる方向を意識してみましょう。

1番かんたんでおすすめなのは口角をキュッと意識的に上げることです。マスクをしている時も試してみてください。

肌に良い栄養を摂る

肌の健康と栄養バランスの関係は盛んに指摘されていますが、ほうれい線対策としてもやはり【有効】です。ただ、アンケート調査では食生活を意識していたのは約20%と少ない傾向でした。

肌や筋肉をつくる良質なタンパク質や肌をダメージと老化から守るビタミンA・E・Cを意識的に摂取し、肌の健康を保ってください。食事だけで不安がある時はサプリメントを活用してみても良いでしょう。

姿勢や表情、嚙みグセの意識・見直し

ほうれい線対策としては【やや有効】で長期に渡り、継続が必要です。アンケート調査では約15%と少数ではありますが、意識・改善しようとしていました。

歯や口の中の問題によって片側で咀嚼してしまっている場合は早めに治療をおすすめします。

表情についていえば、たくさん笑って表情筋をたくさん動かしたり、口角を上げるよう意識するほうがおすすめです。

ほうれい線対策はセルフケアに加え、美容医療の力を借りてみて

代表的なヒアルロン酸注射をはじめ、アプローチできる施術は多数!

セルフケアは有効ではあるものの、毎日継続的に行う必要があり、さらにハッキリとした効果は感じにくいかもしれません。短期間で改善したいならば、美容皮膚科・外科での治療も選択肢に入れてみましょう。

さまざまな施術があり、顔立ちや肌の状態や希望に応じて適切な方法を提案・アドバイスしてもらえるはずです。代表的な施術をご紹介します。

1. 高周波・超音波の照射治療

サーマクールや高密度焦点式超音波治療(HIFU・ハイフ)があります。いずれも高周波や超音波を照射し、熱エネルギーの刺激により、皮膚の引き締めやコラーゲンやエラスチン産生の活性化をねらう施術です。ほうれい線対策の場合、皮下脂肪のボリュームが多い人におすすめされることが多い施術です。

2. 注射による治療

ほうれい線の治療法としては、ヒアルロン酸注射が挙げられます。医療用のヒアルロン酸を皮膚に注入して内側からしわや溝を目立たなくさせ、ボリュームを補う施術です。顔の凹凸を少なくしたり、フェイスラインを形成する目的でも行われます。皮下脂肪のボリュームが少ない人が治療法として選択されることが多く見られます。

3. 糸・針による治療

スレッドリフトは、皮下組織に特殊な糸(時間が経てば溶解する)を通して固定し、皮膚のたるみを引き上げます。皮下脂肪のボリュームが比較的多い人におすすめされることが多い施術です。

4. メスによる治療

代表的な施術として、フェイスリフトがあります。たるんだ皮膚の一部を切除して縫い合わせ、皮膚を引き上げる方法です。美容意識が高く、ハッキリと大きな効果を求めている人が希望することが多い施術です。

ほうれい線をより改善したい場合は、まず医師に相談を

ほうれい線が目立ってしまうのは、たるみを中心にさまざまな原因があることがわかりました。改善する上で重要なのは「骨格や顔の構造を理解し、下がってしまった頬を本来の位置に戻す」こと。セルフケアは日々の地道な努力と継続が必要ですが、頬を本来の位置に戻すというのは難しいかもしれません。その時は、まずは気軽に医師に相談してみましょう。効果的な対策が見つかるかもしれません。

監修・取材協力

銀座高須クリニック院長 高須英津子先生

銀座高須クリニック 院長 高須 英津子 先生

専門は美容皮膚科。女性の立場で患者の希望に寄り添う施術は信頼が厚く、全国から通うリピーターも多い。

高須クリニック 栄院で院長を務め、2022年春、銀座高須クリニック院長に就任。

 

銀座高須クリニック

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座一丁目8-19 キラトリギンザ11階

前の記事へ
次の記事へ