ヒアルロン酸は、肌の潤いを保つ役割を果たす物質で、もともと私たちの体内に存在しています。皮膚とのなじみが良く、整形外科や眼科をはじめとした医療分野でも幅広く使用されています。

美容医療におけるヒアルロン酸の注入治療もまた、ポピュラーな治療法の一つです。しかし、針を使うことや異物(ヒアルロン酸)を注入することへの不安感、副作用のリスクなどから治療を躊躇している方もいらっしゃることでしょう。しかし、適切な治療を受けることで、しわやたるみを自然に改善することができ、施術を受けたその日から効果を実感しやすい治療です。

美容医療におけるヒアルロン酸注入治療の特徴や治療手順、起こり得る副作用などについて解説します。

ヒアルロン酸とは?

ヒアルロン酸とは、私たちの皮膚や軟骨などの組織中に広く存在するゼリー状の物質です。高い保水力があり、特に皮膚(真皮)においては、肌の土台となる細胞の間に存在して水分を蓄え、皮膚の弾力性や潤いを保つ成分として欠かせません。

しかし、ヒアルロン酸は30代頃から減り始め、加齢とともに徐々に少なくなっていくと言われています。ヒアルロン酸が減った肌は、十分な水分を保持できないため、ハリがなくなり、しわやたるみが発生するのです。

ヒアルロン酸注入治療の特徴 

ヒアルロン酸注入治療とは、しわやたるみ、加齢による顔のボリューム減少の改善、小じわの改善、フェイスラインやあごの形成、唇のボリュームアップといった目的で、皮膚にヒアルロン酸を注入する治療法のことです。

ヒアルロン酸注入治療がしわやたるみなどの改善になぜ効果的なのか、その理由をくわしくご説明します。

しわ・たるみの原因は顔の奥にある

私たちの顔は、骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層からできています。しわやたるみは皮膚の表面だけで起きているように見えますが、実は加齢とともにこれらすべての層に変化が起き、しわやたるみを作っているのです。

例えば顔の骨は、加齢とともに骨密度が減少して小さくなります。こめかみ、眼窩(がんか:眼球が入っているくぼみ)のまわりは広がり、頬・あごの骨はへこみ、痩せこけていきます。

顔の土台である骨に変化が起きると、皮下脂肪(皮下組織)、真皮(皮膚)、表皮(皮膚)を十分に支えられなくなるため、垂れ下がってたるみやしわを引き起こします。

“痩せ”や“こけ”は老けた印象の原因に

額やこめかみのへこみ、頬のこけは、皮下脂肪がもともとあった場所から下に移動(下垂)して、元の場所がボリュームダウンすることによって引き起こされます。

「痩せ」や「こけ」が、年老いた印象に直結するイメージはあまりないかもしれません。しかし、こめかみや頬が痩せたり、位置が下がってきたりすると、顔の印象に大きく影響します。

つまり、骨や皮下脂肪の減少を補ってあげることが、しわやたるみの改善の重要なポイントであるといえます。

ヒアルロン酸注入なら、深いしわにも対応可能

ヒアルロン酸注入治療は、ベーシックな若返り治療の一つです。注入部位にあったヒアルロン酸を選び、適切な量を注入することで、深いほうれい線からおでこのしわまで、さまざまなしわに対応可能です。

また、フェイスラインのたるみ改善にもヒアルロン酸注入治療は効果的です。

【ヒアルロン酸注入の効果】治療手順と持続期間

それでは、ヒアルロン酸注入治療の具体的な治療手順と持続期間を紹介します。

ヒアルロン酸注入の手順

ヒアルロン酸注入治療の前には、医師によるカウンセリングが行なわれます。その後、必要に応じて麻酔クリームを塗布。麻酔が効いてきたら細い針でヒアルロン酸を少しずつ皮膚に注入します。

施術時間は部位などによって異なりますが、1か所につき5~10分前後が目安です。

2~3日は注入部分がふくらみ気味になる場合もありますが、約1週間で自然な仕上がりに落ち着きます。

効果と持続期間

注入されたヒアルロン酸は少しずつ体内に吸収されるため、効果は徐々に薄れてきます。効果持続期間は使用する製品や注入する部位によって変わってきますが、一般的には6ヵ月~2年程度です。

ヒアルロン酸注入が効果的な部位

次は、ヒアルロン酸注入が特に効果的な部位の紹介です。ヒアルロン酸を注入する深さや注入量をコントロールすることで、より高い効果が期待できます。

顔のボリュームアップ 

加齢によりボリュームが減少したこめかみや頬は、へこみやくぼみが目立ちます。このような場合には、ヒアルロン酸を皮膚のより深いところに注入します。すると、肌全体がふっくらとボリュームアップし、“痩せ”や“こけ”にともなう老けた印象を改善します。

ほうれい線や口元、額などの深いしわ・溝

ほうれい線やマリオネットライン、額やおでこにできる深い表情じわにも、ヒアルロン酸注入は効果を発揮します。このようなしわに対しては、ヒアルロン酸を真皮と皮下組織の境目付近に注入します。そして、しわや溝を内側から押し上げ、目立ちにくくします。

フェイスラインやあごの形成

フェイスラインのたるみの改善やあごの形成にもヒアルロン酸注入が効果的です。あごやフェイスラインの場合には、ヒアルロン酸を深い層に注入します。お顔バランスを整えるうえで重要となる、美しいEライン(エステティックライン)※2やフェイスラインを手に入れることも可能です。

※1 Eライン(エステティックライン):
顔を横から見たときに、鼻の先と顎を結んだ線。この線より少し内側に唇があることが理想のEラインといわれています。

唇のボリュームアップ

セルフケアでは難しい唇のボリュームアップも、ヒアルロン酸注入でかなえられます。唇の場合は、ヒアルロン酸を皮下組織内に注入します。ほど良く盛り上がり、女性らしい魅力的な唇へと変化させます。

ヒアルロン酸注入で起こり得る副作用

ヒアルロン酸は皮膚となじみの良い成分ですが、治療にあたり副作用が生じる可能性は否定できません。多くの副作用は数日で気にならなくなりますが、不安がある場合は事前カウンセリングの際にきちんと確認しておきましょう。

内出血

ヒアルロン酸注入治療では針を使用するため、多少の内出血をともなう場合があります。もっとも、内出血してもあとが残ることはありません。1週間程度で自然に目立たなくなります。

腫れ・赤み・かゆみ・痛み 

ヒアルロン酸を注入した部位の血行が良くなると、腫れや赤み、かゆみが生じたりすることがあります。治療後少なくとも24 時間は、飲酒、激しい運動、長時間の日光浴、サウナなど高温の場所での滞在は控えてください。

また、しばらくの間は必要以上に注入部位を触らないようにしましょう。顔のエステは最低1 週間は行なわないでください。歯の治療や顔をうつぶせてのマッサージなども、しばらく避けるべきです。

なお、痛みや赤みが気になるときは、注入部位を冷やすと症状が少しやわらぎます。

まとめ

ヒアルロン酸注入治療は、お顔の“痩せ”や“こけ”を改善し、深いしわを目立ちにくくする治療方法です。適切な部位に適切な注入量・方法で注入すれば自然な仕上がりを目指すことが可能で、ダウンタイム※1も比較的短く、施術を受けたその日から効果を実感する方も多くいらっしゃいます。

ヒアルロン酸注入治療を希望する場合は、まず美容医療クリニックなどを訪れ、医師に相談をしましょう。副作用やダウンタイ*1ムについても確認し、信頼のおける医師のもとで治療を受けることをおすすめします。

※1ダウンタイム:
施術後から回復までの期間のこと。施術前のように生活できるようになるまでの期間。

監修

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古⼭ 登隆 先⽣

医療法⼈社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995 年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック

住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

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