美容の世界は、次々とトレンドが移り変わり、目新しいケアが続々と登場しています。その中でも美容医療に関する注目は年々拡大傾向にあり、施術したいと考える人も増えています。(図1)

一方で、美容医療は正しい情報を得る機会が少なく、「興味はあるが失敗したくなくて踏み切れない」、「怖い」、「敷居が高い」といった意見もまだ多く存在します。今回は、自由が丘クリニック 古山 登隆先生が、フェイシャルの美容医療の基本の基を解説します。美容医療クリニックの門をたたく前に参考にしてみてください。

美容医療とは?

美容医療は、「自分らしい美しさを求めて見た目の改善を図るための医療」です。

病気やケガを治すために行われる医療行為とは異なり、「自分の意志でのぞむ治療」で、自分らしい美しさを手に入れる手助けをし、人生に彩を添えてくれます。しかし、治療後の満足度が個人によって差があり、トラブルなどにもつながりやすいデリケートなものです。トラブルを避けるためにも、美容医療について、正しい知識を持っていただきたいと思います。

美容医療と美容整形、一般的なエステティックサロンとの違い、そして美容医療の役割

美容医療とエステティックサロンは混同されがちですが、実は大きく異なります。

美容医療は、国家資格である医師免許を持つ者が、手術、医薬品や医療機器による注入などの施術、医薬品の処方などを行う医療行為です。標ぼう科は「美容外科」「美容・形成外科」「美容皮膚科」が一般的で、治療の種類にはメスを使う外科手術治療、注射や機器などによるメスを使わない治療、内服薬による治療、外用薬による治療等があります。このメスを使う外科的施術は「美容整形」と呼ばれていることがありますが、医療法上の正式名称ではありません。一方、エステティックサロンでは、医師の資格を必要としない施術を行います。エステティックサロンはリラクゼーションなどを目的とした「サービス」のことで、「医療」分野である美容医療とは大きな違いがあります。

美容医療のゴールは美しさです。今の自分より美しくなることで、大きな喜びも得られます。一般的に見た目の美しさは皮膚科で、心の喜びは精神科で治療するわけですから、美容医療は皮膚科も精神科の領域を担っているともいえます。

美容医療を利用する人は、昔と比べて増加している

コロナ禍の影響もあって、美容医療を行う人は増えてきています。

これからは、いま以上に普段のスキンケアの延長として取り入れる時代になると思います。近年、若年層は写真加工などで顔のパーツを理想の形に変えたり、メタバースなどの仮想空間で、理想の自分を創造し、自己満足・高揚感を満たしています。美容医療はリアルで同様の自己満足・高揚感を得るための行為と考えてみてはいかがでしょうか。

美容医療のトレンド

主流はメスを使わない非外科的施術

日本と比べると美容医療のハードルが低い海外では、すでに施術はより「ナチュラルに」、そして「ヘルシーに」がキーワードになってきています。日本でも、その傾向が強まっていて、最近の主流はメスを使わない非外科的施術になっていると感じています。

またクリニックに来院される方々には、大きく分けて2つの目的があります。パーツの形をより魅力的に変えたいというビューティフィケーションと、シミ・しわ・たるみ等老化による変化の改善を目的としたアンチエイジングのご相談です。

どんな悩みが多くて、どんな施術があるの?

アンチエイジングのご相談では、まずシミについてご相談される方が多く、その後、しわ、たるみと他の気になる箇所を追加で施術される傾向があります。美容医療は、2000年ごろから一気に治療法が出てきて、治療に用いられる製剤が大きく進化しています。以前よりもより安全に治療を受けることが可能になっていますので、適正に利用するのが賢い選択と言えるでしょう。

シミ

シミには2大治療法があり、シミの原因であるメラニンを破壊し、排出する、レーザーやホワイトライトを使う熱刺激系治療と、医師の指導を受けながら、自宅で治療を行えるトレチノイン・ハイドロキノン療法(外用治療)があります。この他、内服治療等、複数の選択肢がありますが、より高い効果を出すために複数の治療方法を併用することもあります。

しわ・たるみ

しわ・たるみも同様にさまざまな施術があります。例えば特殊な糸を用いて垂れ下がった皮下脂肪を元の位置に戻し、下がってこないように留める糸リフト、医療機器を使用した超音波を用いて行うハイフ(HIFU)など、患者さんの状態や希望に合わせて施術方法を変えていきます。

その中でも、眉間や目尻などにできた表情じわには、「ボツリヌス注射」が一般的な治療法です。また、たるみじわの改善には、「ヒアルロン酸注射」による治療が一般的です。

古山先生に聞いた素朴な疑問

美容医療にハードルの高さを感じられている方々には、いつから始めるのが適切なのか、カウンセリングやクリニック選びについてなど、はじめの一歩を踏み出すための素朴な疑問を、古山先生にお伺いしました。

美容医療は、年齢を重ねてからやるべきか、 その前から始めるべきでしょうか

早期予防、早期治療が理想です。自分が美容医療の必要性を実感する前から医師とカウンセリングをして、早期に開始ができればいいですが、自然と歳をとっていく中で、ご自身が気になりだしたタイミングで、美容医療を活用してみてください。ただ、美しさというのは知性とともにあるものですので、治療を受ける方も美容医療の知識を持ち、治療を受けていただくことで、満足度も上がると思います。

カウンセリングを受ける際の心構えについて

まず、カウンセリングは、医師と希望する治療について相談をし、医師があなたに合った「治療計画」を説明する時間です。

カウンセリングを受ける際の3つのポイントをお伝えします。

ポイント①:治療を受けてどうなりたいのかを、しっかり医師に伝える
ポイント②:治療に関する説明は必ず医師から受ける
ポイント③:治療について気になることは、すべて確認する

また、カウンセリングを受けたからといって、必ず治療を受ける必要はありません。治療に対して納得できるまで時間を置くことも大切です。また、カウンセリングを受けた結果、治療に関する十分な説明がされなかった、納得できるまで相談できなかった、という場合には、別のクリニックに相談することも検討してみてください。

信頼できる医師やクリニックの選び方

医師と患者さんの相性のようなものもあるので、まずはカウンセリングなどを受けてみることです。また、長年きちんと美容医療を続けてきているかというキャリアをみることも大事です。医師免許を持っていれば、それまで別の担当領域の医師でも、美容医療をすることはできるため、担当医師やクリニックの美容医療の実績があるかどうかを確認してください。料金だけで選ぶことはしないでください。

そして、事前のカウンセリングで説明を受け、質問をして不明点をなくし、納得した上で施術を行うようにしてください。

これから美容医療を受けようと考えている方へ、古山先生よりアドバイス

治療を受けるクリニックの選び方はとても肝心です。それによって治療の満足度が大きく左右されます。

美容医療のクリニックといっても、それぞれ得意分野や考え方が異なっています。それを念頭において、まずは自分のやりたいこと、仕上げのイメージなどの方向性を明確にしておき、しっかりそれを伝え、相談することです。安心感も大事です。未承認でも質の良い製材・製剤はありますが、安価だということだけで判断するのは危険で、厚生労働省が認めた承認品はやはり安心感も違います。

美容医療は上手に取り入れていくことで、毎日が明るく前向きに過ごせることができ、人生に彩を添えてくれます。まずは、自分にあった信頼できるクリニック探しから始めてみましょう。

監修・取材協力

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古⼭ 登隆 先⽣

医療法⼈社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995 年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック

住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

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