ドラッグストアなどで誰でも気軽に買える「レチノール」配合の化粧品。しわやはりに効く成分という話を耳にしたことのある方もいるかと思いますが、その効果や正しい使い方を知っている人は意外にも少ないかも…?
そこで今回は、野本真由美クリニック銀座 院長 野本真由美先生に、レチノールの効果や正しい使い方、さらには最近話題の「バクチオール」についても解説していただきました。
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ドラッグストアなどで誰でも気軽に買える「レチノール」配合の化粧品。しわやはりに効く成分という話を耳にしたことのある方もいるかと思いますが、その効果や正しい使い方を知っている人は意外にも少ないかも…?
そこで今回は、野本真由美クリニック銀座 院長 野本真由美先生に、レチノールの効果や正しい使い方、さらには最近話題の「バクチオール」についても解説していただきました。
レチノールはビタミンAの一種です。レチノールを知るために、まずはビタミンAの作用からご説明します。
■ターンオーバーを促進させて、皮膚の再生を促す
■真皮に直接働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸を増やして肌をふっくらさせる
■真皮の血管を増やして、皮膚に栄養を届きやすくする
ビタミンAが他の成分と異なるのは、細胞内にある核の受容体に結合してDNAに直接アプローチすることができるので、細胞レベルで皮膚の機能を改善できることです。
続いて、「レチノール」の効果について、詳しくご説明します。
レチノールはビタミンAの一種ですが、その種類によって特徴が異なるため、適した使い方も異なります。ビタミンAの中で最も生理活性が高い「トレチノイン」は、ニキビやシミの治療に用います。
出典:野本真由美先生から提供
「パルミチン酸レチノール」「プロピオン酸レチノール」「酢酸レチノール」「レチノール」「トレチノイン」について、特徴をご紹介します。
「パルミチン酸レチノール」「プロピオン酸レチノール」「酢酸レチノール」はレチニルエステルと呼ばれ、ビタミンAの中で最も安定性が高く、皮膚に多く備蓄されています。皮膚に刺激を起こしにくいため、市販の化粧品にも配合されています。紫外線からの「光老化」を予防することができます。
ビタミンAの中でも、「レチノール」は中間にあたる成分で、美容皮膚科では肌質の改善によく使われています。肌への刺激をなるべく抑えながらも、小じわの改善やはりツヤが欲しいといった方に向いています。化粧品の一部にも低濃度のレチノールが使用されています。
レチノールはレチニルエステルに比べて、ビタミンAの生理活性が高い一方で、光に対して過敏になる、つまり紫外線の影響を受けやすくなるデメリットもあります。そのため、レチノールの配合された化粧品は「夜のみ」に使用することがほとんどです。
ビタミンAの中で最も生理活性が高く、皮膚に対する作用が強いのが「トレチノイン」です。トレチノインは、ビタミンAが持つ効果を最大限に発揮することができる成分で、深いしわやたるみなどの抗老化治療において活躍するほか、シミやニキビなど皮膚疾患の治療薬として使用します。
トレチノインは効果が強い一方で、肌への刺激が強く、安定性が弱いというデメリットもあります。トレチノインによる治療を受けている間は紫外線の影響を受けやすくなるため、使用は「夜のみ」で、日中の紫外線対策も必須です。
このように、同じビタミンAでも、種類によって効果や使い方が異なるのが、面白いところです。
ビタミンAのデメリットのひとつが「副反応」です。代表的な副反応には、「赤み」「皮剥け」「乾燥」「つっぱり感」などのA反応と呼ばれるものがあり、レチノールやトレチノインのように生理活性が強くなるほど、A反応が起こりやすくなります。
なお、乾燥肌や敏感肌の方は、A反応が出やすい傾向にあります。反対にオイリー肌の方は成分の浸透が弱くなり、A反応が出にくいことがあります。
こうした観点から、より強い成分を使いたい場合は美容クリニックで皮膚の状態を診てもらい、自分にあった製品を選ぶとよいでしょう。
市販のレチノール配合化粧品では、パルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酢酸レチノール、レチノールの中から組み合わせて配合している製品が多いです。同じレチノール配合化粧品でも、配合濃度はさまざまです。
市販品と医療機関専売のレチノール配合化粧品の違いは、配合されているレチノールの濃度が高いことや、カプセル化やマイクロエマルジョン化などの技術でレチノールがより長く皮膚にとどまることができることにあります。
医療機関専売品も、製品によって含まれている成分は異なります。「攻めるタイプ」の製品と「守るタイプ」の製品があり、シミやニキビなど皮膚疾患や深いしわなどの老化に対しては「攻めるタイプ」を、紫外線による老化を遅らせたい人は「守りのタイプ」の製品を選ぶと良いでしょう。
「攻めるタイプ」は皮膚の刺激も強いので、A反応が出やすくなります。攻めと守りは使い分けることが大切なので、医師に相談をしながら、自分の肌質にあったものを選んでもらいましょう。
近年、レチノールの持つメリットはそのままに、デメリットを克服したスキンケア成分「バクチオール」が登場しました。
バクチオールは、マメ科のオランダビュという植物の種子から抽出された成分で、レチノールに近いしわやはりの改善効果があることが報告されています。さらに、強い抗酸化・抗炎症作用を持っていることも特徴です。
刺激が強くレチノールが使えないという方には、バクチオール配合化粧品というオプションもあります。またレチノールとバクチオールを一緒に配合して、レチノールの効果を高めて、かつ皮膚の刺激を下げるという製品もあります。
レチノールでなかなか変化を感じられない場合、トレチノインによる治療を続ける必要があるのではないか、と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、美容の世界では“大は小を兼ねる”ということはありません。成分が強ければさらに良いというものではないのです。レチノールで効果が得られない時は、まず「そもそもビタミンAが肌に合っているのか」という点から考える必要があります。
私がよく患者さんにご紹介している美容成分の“御三家”があります。
(1) ターンオーバーを促進して皮膚の再生を促す「ビタミンA」
(2) 優れた抗酸化・抗炎症作用を発揮する「ビタミンC」
(3) 皮膚のコラーゲンを増やす「ペプチド」
ビタミンAが適した方もいれば、ビタミンCを優先したほうがよい方、3つとも必要な方など、人によって皮膚に必要な成分は異なります。
皮膚のエイジングが気になって、色々なことを試したけど悩みが改善しないときは、まず毎日のスキンケアやメイクを見直すことから始めましょう。
すぐに美容クリニックを訪れる必要はありませんが、何をしても悩みから解放されない場合は、診察でアドバイスを受けてみるのもひとつの方法です。
信州大学医学部卒業。新潟大学医学部付属病院皮膚科勤務後、2006年に予防医学の勉強のため、米国留学。2007年、野本真由美スキンケアクリニックを開院し、2018年に野本真由美クリニック銀座を開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会認定専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医、薬学博士。所属学会は日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会、日本美容皮膚科学会、日本香粧品学会、日本東洋医学会、日本抗加齢医学会など。アメリカのビバリーヒルズにあるオバジクリニック(Obagi Skin Health Institute)のオバジ先生が国内で唯一認める教育ドクター。西洋の美容医学と伝統的な東洋医学のメリットを融合した独自の美容皮膚科治療プログラムを提供している。“皮膚がきれいになると、幸せを感じる”その思いが届くクリニックでありたいと思い、幅広い選択肢の中から、一人一人に適した治療の提案を行う。
野本真由美クリニック銀座
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目6-1 銀座三和ビル4F