お腹の脂肪は1度ついてしまうとなかなか落としにくいものです。
お腹の脂肪が年齢を重ねるにつれて落ちにくくなったと感じている人や、ウエスト周りにお肉がついてボトムスがきつくなったという人も多いでしょう。
本記事では、お腹の脂肪がつく原因や、お腹痩せの効果的な方法について、湘南美容クリニックの御園生 佳奈子(みそのう かなこ)先生にお話をうかがいました。
監修:御園生 佳奈子 先生(湘南美容皮フ科内科クリニック 六本木院 院長)
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お腹の脂肪は1度ついてしまうとなかなか落としにくいものです。
お腹の脂肪が年齢を重ねるにつれて落ちにくくなったと感じている人や、ウエスト周りにお肉がついてボトムスがきつくなったという人も多いでしょう。
本記事では、お腹の脂肪がつく原因や、お腹痩せの効果的な方法について、湘南美容クリニックの御園生 佳奈子(みそのう かなこ)先生にお話をうかがいました。
監修:御園生 佳奈子 先生(湘南美容皮フ科内科クリニック 六本木院 院長)
お腹の脂肪を減らすためのポイント
お腹につく脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪の2種類があります。自分のお腹がぽっこりしている原因が、皮下脂肪なのか、内臓脂肪なのかによって、減らすためのアプローチ方法に違いが生まれます。
お腹の脂肪の中でも皮下脂肪とは、ぷにぷにと柔らかく指でつまめるものをいい、お腹はもちろん太ももや二の腕など、体の表面である皮膚のすぐ下につくのが特徴です。
また、皮下脂肪には、蓄積されるまでに時間がかかる一方で、いったん蓄積されると落としにくいという特性があります。
なお、女性は男性に比べて、皮下脂肪がつきやすいとされているのは、女性ホルモンの影響によるものです。
卵巣から放出されるエストロゲンというホルモンの影響により、女性らしい丸みのあるボディを作るために、皮下脂肪をため込みやすい体の構造となっています。
お腹の脂肪の中でも内臓脂肪は、腹筋の内側、小腸など臓器の周囲につく脂肪です。内臓脂肪は蓄積しやすい一方で、運動や食事療法で比較的落としやすくなっています。
女性はエストロゲンの影響により皮下脂肪がつきやすいものの、男性は女性ホルモンが分泌されないため、皮下脂肪型の肥満よりも内臓脂肪型の肥満が多い傾向にあります。
内臓脂肪型の肥満は、見た目に影響があると同時に、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病リスクを高めることがわかっているため、健康な体を長く維持する上でも、過剰なお腹の内臓脂肪を落とすことが大切です。
お腹に脂肪がつくのは、加齢による筋力や活動量の低下と考えられていましたが、実は最新の研究で誤解であることが発覚しました。1
従来、加齢に伴う筋力や活動量の低下による消費エネルギー量の減少が肥満の原因になるのではと考えられていましたが、20~60歳までの消費エネルギー量はほぼ変わりません。
生活習慣を変えていないつもりでも体重が増えてしまう場合は気づかないうちに摂取エネルギー量が増えてしまっている可能性が考えられます。
お腹の脂肪がつく原因としては、過食や運動不足によるエネルギーの過剰摂取が考えられます。
食べ過ぎや高カロリーな食生活によって摂取カロリーが増えたり、逆に運動不足になって消費されるエネルギーが減ったりすると、消費しきれなかった脂質や糖質は、皮下脂肪や内臓脂肪となって蓄積していきます。
仕事や家事が忙しく、ついつい手軽な炭水化物を中心に食べ過ぎてしまったり、運動する時間がなかったりすると、肥満の原因となるかもしれません。
お腹の脂肪がついてしまう原因としては、男女ともに、加齢によるホルモンの分泌低下が考えられます。
たとえば、女性の場合、閉経の前後、いわゆる更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に減少します。
エストロゲンは、丸みのある体をつくるために皮下脂肪を蓄積する一方で、皮下脂肪が過剰にならないように抑制する役割も担っています。
エストロゲン分泌量が減少すると、体の脂肪量をコントロールする働きが低下することによって脂肪がつきやすくなるのです。
男性には女性でいう閉経にあたるような急激な低下はありませんが、同じようにテストステロンという男性ホルモンの分泌量が20〜30代をピークに年齢とともに徐々に低下していきます。
テストステロンは男性らしいがっしりした筋肉質な体をつくる働きをするホルモンですが、この働きが弱くなることで筋肉量の低下や、脂肪がつきやすい体につながってくると考えられています。
過度なストレスもお腹の脂肪の原因になりえます。
ストレスが直接脂肪を増やすというわけではありませんが、ストレスによる暴飲暴食で摂取エネルギーが過剰になることは大いに考えられます。
また、精神的な負荷がかかった状態が長く続くと、自律神経のバランスが乱れることで代謝が落ちてくるなど、間接的に肥満に影響していると考えられています。
ダイエットやお腹痩せを成功させるためには、摂取エネルギーを消費エネルギーよりも少なくすることが大切です。
余剰エネルギーをできるだけ減らし、脂肪が分解されてエネルギーとして消費されることで、お腹についた脂肪が減っていきます。
食事で摂取エネルギーを減らす、運動で消費エネルギーを増やすといった方法が基本となりますが、摂取カロリーを減らしすぎて栄養不足にならないよう注意しましょう。
大事なイベントや健康診断を控えた人でよく耳にしますが、一晩でお腹の脂肪を落とすことは残念ながらできません。いずれの方法も時間が必要です。
食事によってダイエットを成功に近づけるには、たくさん噛むことが大切です。咀嚼回数が増えると、DIT(食事誘導性熱産生)が高まり、食後のエネルギー消費量が増えます。
DITとは、食事中の栄養が分解される際に、安静にしていても代謝が良くなる仕組みのことで、食事中に体が熱くなったり、汗をかいたりする現象を指します。
また、咀嚼回数が増えると、満腹中枢が刺激されるために早食いした時よりも満足感を得られやすく、摂取エネルギー量が抑えられます。
そのため、刺激される20分くらいを目安に、咀嚼回数を増やして満腹中枢を高める食事を心がけるといいでしょう。
お腹の脂肪を減らしたり減量を成功させたりするには、高タンパク、低糖質の食事をこころがけるのが重要です。
お肉や卵、お魚などのタンパク質は、ごはんやラーメンなどの炭水化物と比較し、DITが高いとされています。
糖質や脂質がDITで消費されるエネルギーは数%ですが、タンパク質の場合は30%と高いため、同じカロリーを摂取したとしても、タンパク質中心の食事のほうがカロリー消費が大きくなります。
タンパク質を摂取するときの目安は、運動習慣があまりない人で、自分の体重×1g(体重が50kgの人なら、50g)となります。また、運動を行っている場合は運動強度に応じて多めにタンパク質を摂ると良いでしょう。
【運動強度に合わせた1日のタンパク質の摂取目安】
糖質制限ダイエットは、短期間でストンと体重を落とすことができると言われていますが、実際のところ脂肪が落ちる割合は少なく、水分が抜けている割合のほうが多いと言われています。
糖質には水分を引き込む性質をあるため、糖質を極端に抑えると水分を体内にため込むことができず、体内から水分が抜けた状態になります。
そのため糖質制限ダイエットをする場合は、落とした体重のうち、すべてが脂肪というわけではなく、水分が抜けた影響が大きいことを理解する必要があります。
また、過度な糖質制限は身体に悪影響を及ぼす場合もあるので、適度に糖質を控える程度のダイエットが良いでしょう。
ダイエット中の食事は、食物繊維の豊富な食材を先に摂取するのがおすすめです。
サラダなどの野菜や副菜、おかずを先に食べると、血糖値の上昇を抑えて脂肪の吸収を緩やかにしてくれます。そのため、食事をとるときには、主食であるご飯やパンはできるだけ最後に食べるのがおすすめです。
同じ食事を摂っていても、順番を変えるだけで満腹感を作り出し、食欲を抑制する作用が期待できるので、ご家族のいる方でも取り入れやすい工夫ではないでしょうか。
サプリメントや特定保健用食品(トクホ)は、ポイントを押さえて活用すれば、お腹痩せなどのダイエットをサポートしてくれます。
たとえば、糖や脂質の吸収を抑える働きを謳った特定保健用食品(トクホ)のドリンクは、食物繊維を含んだものがあるため、食前に摂取しておくと、食物繊維を摂りにくいコンビニ弁当や外食の時にも、血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。
サプリメントや特定保健用食品(トクホ)だけに頼るのではなく、効果的な使い方を知って活用しましょう。
脂肪細胞には、脂肪をため込む白色脂肪細胞と、熱を発生させて脂肪を分解する褐色脂肪細胞の2種類があります。
唐辛子に含まれるカプサイシン、緑茶に含まれるカテキンなどの成分には、この褐色脂肪細胞を活性化する役割があることが研究で示されています。
褐色脂肪細胞を活性化する食材を意識的に摂取することは、カロリー消費に一役買っているといえるでしょう。
ファスティングは、普段から過剰なカロリー摂取をしている人であれば「一時的に摂取カロリーを減らす」という意味では脂肪を減らすことに寄与する可能性はあります。
しかしながら、長期にわたってファスティングや置き換えダイエットを取り組んだり、複数回繰り返したりすると慢性的に栄養不足の状態が続いてしまうと健康に支障をきたすので注意が必要です。
実際に行う場合は、ファスティングに関する資格保有者など、専門家の意見を聞きながら行うとより安心でしょう。
ファスティングや置き換えダイエットなどの方法は、あくまでも必要な栄養素が充足したうえで、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを考えた食生活をすることが前提です。
お腹の脂肪を減らして理想の体型になろうとしているのに、栄養不足で髪がパサついたり、肌がカサカサになってしまったりしては本末転倒です。過度な食事制限や無理なファスティングは控え、食事を楽しみながら継続していくことを重視しましょう。
また、食事制限によって摂取カロリーを減らすと脂肪細胞が小さくなり、お腹痩せにつながりますが、食生活が戻って摂取カロリーが増えてしまうと、脂肪細胞はまた大きくなり、リバウンドしてしまうことを忘れないようにしましょう。
お腹の脂肪を落とすためには、筋トレや有酸素運動で摂取エネルギー量よりも消費エネルギー量が多い状態を目指すことが大切です。
筋トレはエネルギーを消費する筋肉を発達させ、さらに筋肉が発達するとDIT(食事誘導性熱産生)を高くすると言われています。
また、有酸素運動を行った場合、運動のエネルギー源として糖質と脂質を消費します。
そのため、筋トレでエネルギー消費する筋肉を発達させ、有酸素運動でエネルギーをさらに消費するといった筋トレと有酸素運動の組み合わせが理想的です。
有酸素運動は20分以上の継続が理想とされていますが、5分、10分といった短い時間でもその分のエネルギーは消費されているので、短時間の運動も有効です。
有酸素運動は継続して習慣化することが大事なので、あまりハードルを上げ過ぎないことも大切といえます。具体的な運動は個人差があるものの、目安としては、「ちょっとキツい」と感じる程度の運動負荷がいいでしょう。
有酸素運動はきついほど良いというわけではありません。最大心拍数の40〜60%程度の心拍数の強度で有酸素運動するのが脂肪を燃焼させるには効率的と言われています。 以下の計算式で、脂肪燃焼に効果的な強度を把握することができます。
例えば、年齢が30歳で安静時心拍数が75だとして計算すると、121〜147/分の強度が脂肪燃焼しやすいことになります。
現在はスマートウォッチなどで心拍数が測れるものも多いので、うまく利用して活かしてみると良いのではないでしょうか。
お腹痩せを実現するには、腹横筋を鍛える筋トレがおすすめです。腹横筋は、お腹を凹ませるときに使う筋肉で、内臓を支える天然のコルセットとも言われています。
上体起こしで鍛えられる腹直筋を刺激するよりも、腹横筋を鍛えると、お腹の厚みを薄くすることが可能なため、筋トレのメニューに加えてみると良いでしょう。
また、腹横筋だけでなく、脇腹の筋肉である「腹斜筋」を鍛えると、くびれを作るのに役立ちます。
腹横筋を鍛えるポーズ「プランク」と、腹横筋・腹斜筋を同時に鍛えるポーズ「サイド・プランク」
お腹の脂肪を減らす方法としては、EMSや加圧トレーニング、エクササイズマシンなど、機器を使って筋肉を増強させるものがあります。
EMSなどの機器は、医療の現場やアスリートの間でも活用されていますが、機器によって筋肉をつけるというより食事で摂取エネルギーを減らしたりは、どちらかというと「補助的に使用してトレーニングの効率を上げる」ことを目的に使用しています。
製品によって出力や周波数に違いがあるので、市販で手に入るものに効果があるかどうかを一般の方が見極めるのは、少々困難かもしれません。
お腹の内臓脂肪を減らす代表的な漢方薬に「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」というものがあります。
防風通聖散は、防風、麻黄、大黄など18種類の生薬を配合した漢方薬のことで、便秘がちな体質の人に向いている漢方です。
防風通聖散は、生薬の発汗、利尿作用によって排泄を促すことで便秘を改善し、肥満を解消する目的で古くから使われてきた漢方薬で、医療の現場で利用することがあります。
なお、漢方薬はあくまでも医薬品です。市販品を購入する場合、体質にあっているかどうかを担当の医師や薬剤師に相談したうえで活用を検討しましょう。
食事や運動などの減量方法では、お腹痩せが実現できなかったり、長期間のダイエットが続かなかったりする場合は、美容医療による痩身治療も効果的です。
たとえば、食事制限や運動をしても落としにくい皮下脂肪の脂肪細胞そのものを減らしてお腹の部分痩せが期待できます。
脂肪細胞の数を減らせるので、リバウンドしにくく、長期的に体型を維持しやすくなるのが魅力です。
また、内臓脂肪へのアプローチとしては、医師による食事指導や運動指導が受けられたり、場合によっては投薬を用いた方法を提案してもらえたりします。
美容医療とエステの違いは、医療行為であるかどうかという点にあります。
美容医療の場合は、医師のみが使用できる出力や周波数の機器で施術をするので痩身効果が期待できます。また、もし施術によるトラブルが起きた際も、医師が対処できるといった点も安心です。
エステの場合は、費用は美容医療より低価格であるものの、医療分野で用いられる出力が高い機器は利用できないこと、また万が一トラブルが起きたときに対処はできないことを理解しておきましょう。
エステは、マッサージで硬くなった筋肉や脂肪をほぐしたり、音楽やオイルを組み合わせてリラックスした空間を演出したりとリラクゼーション目的で使い、うまく使い分けていただくと良いでしょう。
美容医療の痩身治療にはさまざまな種類があり、必ずしもメスや注射を使うものばかりではありません。機器や薬剤を使った施術は、部位や患者さんの脂肪のつき方、体格によって手法を変えていて、ケースバイケースです。皮下脂肪に対してアプローチできる具体的な施術をご紹介します。
※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません
脂肪吸引は広範囲にわたって一気に脂肪細胞を減らしたい場合に向いています。しかし、他の痩身施術に比べるとダウンタイムが長いのがデメリットです。また、施術によって傷が残ってしまったり、肌がデコボコになってしまったりとトラブルも発生しやすいため、リスクをしっかりと理解した上で施術を受けましょう。
また、医師の技術によっても仕上がりに差が出るため医師選びを慎重にする必要があります。
脂肪溶解注射は、細かいデザインにも適応しているため顔周りや、肘上、膝上などピンポイントで狙って脂肪を減らすことが可能です。
ただし広範囲の施術の場合は薬剤の使用量や施術回数が増えるためコストパフォーマンスが悪くなることもあります。
脂肪冷却治療の場合は、アプリケーターと呼ばれる専用の機器が豊富なため、お腹やわき腹のような広範囲の脂肪を減らしたいときに向いています。厚労省承認機器もあるので、安全性や効果に関しても信頼できるものもあるのが魅力です。デメリットとしては、人によっては施術の際に少し痛みがあったり、内出血が出たりといったリスクもあります。
加熱治療は、加熱によって皮膚を引き締める作用があります。特に、産後や年齢によるたるみがある場合に有効です。ただし、加熱治療の場合機器の種類によっては回数がかかるものもあります。
漢方薬などの処方薬は、内臓脂肪が多い方に向いています。漢方薬の中には、食欲を抑える薬や脂質や糖質の吸収を抑える薬などもあり、組み合わせて使うこともあります。しかし、処方薬を使用したからといって必ず痩せるものではなく、普段の食事や運動などの生活習慣を見直しながら利用するのが大切です。
お腹の脂肪を落としたい場合、自分のお腹が皮下脂肪なのか内臓脂肪なのかを見極めたうえで、治療方針を検討するのが大切です。
お腹のお肉が皮下脂肪の場合は、運動や食事療法などの一般的なダイエットだけでは落とすことが難しいので、自分の力だけで解決しようとせず、美容医療の手を借りるのもいいでしょう。
美容医療のクリニックによっては、痩身だけでなく、二重の手術やしわ治療など、さまざまな治療を扱っています。医師によって専門ジャンルが異なるので、クリニックのホームページで症例写真をチェックするなどして、痩身治療が得意なクリニックを探すのがおすすめです。
痩身を専門にしている医師であれば、食生活の改善や運動などのセルフケアで対処できる部位と、美容医療の力を借りた方が良い部位のアドバイスも含めてカウンセリングをしてくれます。
その場ですぐに施術を決める必要はありませんし、かまえすぎず、まずは相談するという気軽な気持ちでクリニックを訪れてみてはいかがでしょうか。
参考文献